自己肯定感を下げてしまう「思考のクセ」に気づき、心穏やかに過ごすヒント
なんだか心が晴れないと感じたら?無意識の「思考のクセ」に気づいてみませんか
子育てや介護が一段落し、ご自身の時間が増えてくるにつれて、ふと立ち止まり、これからの人生について考え始める方もいらっしゃるかと思います。そんな時、これまでの経験を振り返る中で、漠然とした不安を感じたり、「これでよかったのだろうか」と自信をなくしたり、自己肯定感が揺らぐような気持ちになることがあるかもしれません。
夫との会話が減った、成人した子供との関係が希薄になった、親の介護で家族間の意見が食い違う…日々の暮らしの中で生じる様々な出来事が、さらに心を重く感じさせることもあるでしょう。
もし、あなたが今、「なんだか心が晴れない」「自分に自信が持てない」と感じているとしたら、それはもしかすると、あなたが無意識のうちに持っている「思考のクセ」が影響しているのかもしれません。
私たちは誰でも、物事を捉える際に、自分なりの考え方や受け止め方のパターンを持っています。そのパターンが、時に私たちの心を縛り付け、自己肯定感を低下させてしまうことがあります。
この記事では、自己肯定感を下げやすい代表的な「思考のクセ」を知り、それに気づき、そして少しずつ変えていくための具体的なヒントをご紹介します。自分の思考パターンに気づくことは、自分自身を大切にする第一歩です。心穏やかに、自分らしく過ごすためのヒントとして、お役立ていただければ幸いです。
あなたの心を重くする?代表的な「思考のクセ」を知る
私たちが無意識のうちに使っている「思考のクセ」は、認知の歪みとも呼ばれ、現実をありのままではなく、特定の偏ったレンズを通して見てしまうようなものです。自己肯定感を低下させやすい、代表的な思考のクセをいくつかご紹介します。
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白黒思考(全か無か思考) 物事を「完璧か、無価値か」のどちらかで判断する考え方です。少しでも失敗すると、「全てがダメだ」と思ってしまいがちです。「今日の料理は少し焦げてしまった。私は料理が全くできない人間だわ」のように、たった一つの失敗で自分自身を全否定してしまいます。
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一般化のしすぎ たった一度や二度の否定的な出来事から、「いつもそうだ」「全てがそうだ」と広範囲にわたって結論づけてしまう考え方です。「夫に一度話を聞いてもらえなかった。どうせ何を話しても無駄なんだ」のように、特定の状況での経験を、全ての状況に当てはめてしまいます。
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心のフィルター 物事の否定的な側面にばかり注目し、肯定的な側面や良い出来事を無視してしまう考え方です。たとえ良いことがいくつあっても、たった一つの悪いことばかりを心の中で繰り返し考え、全体を暗く捉えてしまいます。「今日の集まりは楽しかったけれど、あの時、私が失礼なことを言ってしまったかもしれない…」のように、良かったことよりも、些細なネガティブな点ばかりが心に残ります。
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結論の飛躍 十分な根拠がないのに、悪い方向に決めつけてしまう考え方です。これには、相手の気持ちを読みすぎると感じてしまう「読心術」や、根拠なく悪い未来を予期する「予言」などがあります。「子供からすぐに返信がない。きっと私のことを迷惑に思っているのだろう」「この新しい習い事を始めても、どうせ私には続かないわ」のように、事実に基づかず否定的な結論を急いでしまいます。
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「〜すべき」思考 自分や他人に対して、「〜すべきだ」「〜ねばならない」という強いルールや期待を持ちすぎる考え方です。このルールから外れると、自分や他人を厳しく批判してしまいます。「母親なら、家族のために完璧に家事をこなすべきだ」「夫は、私の気持ちを察するべきだ」のように、理想通りでない現実に対して、罪悪感や怒りを感じやすくなります。
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自己関連づけ 自分には直接関係のない否定的な出来事まで、自分のせいだと感じてしまう考え方です。「子供が仕事で失敗したのは、私がもっと違う育て方をしていればよかったからだ」「夫の機嫌が悪いのは、私が何か気に障ることを言ったに違いない」のように、周囲で起こるネガティブなことに責任を感じてしまいます。
自分の「思考のクセ」に気づく練習
これらの思考のクセは、長年の間に身についてしまった無意識のパターンです。まずは、「自分もこんな風に考えてしまう時があるかもしれない」と、自分自身の思考に注意を向けることから始めてみましょう。
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心の中で思ったことを「書き出す」 ノートやメモ帳に、ふと心に浮かんだ考えや、感情が動いた時に頭の中でぐるぐる考えていることを書き出してみましょう。「こんなことを考えるなんて…」と批判せず、ありのままに書き出すのがポイントです。書き出すことで、頭の中が整理され、自分の思考パターンを客観的に見られるようになります。
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感情とセットで思考を振り返る 不安を感じた時、落ち込んだ時、怒りを感じた時など、ネガティブな感情が生まれた瞬間に立ち止まり、「その時、自分は頭の中で何を考えていたのだろう?」と振り返ってみましょう。感情と思考は強く結びついています。感情のトリガーとなった思考に気づくことが大切です。
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「なぜ、そう思うのだろう?」と問いかける ネガティブな考えが浮かんだ時に、「なぜ、自分はそう考えるのだろう?」「その考えには、どんな根拠があるのだろう?」と自分に問いかけてみてください。立ち止まって考えることで、無意識の思考のクセが見えてくることがあります。
これらの練習を通して、ご自身の思考パターンに気づき始めることができるでしょう。「あ、また白黒思考になっているな」「これは一般化しすぎかもしれない」のように、自分の思考のクセに「名前をつける」ことが、次のステップへの第一歩となります。
ネガティブな「思考のクセ」を少しずつ変えるヒント
自分の思考のクセに気づくことは大切ですが、それに囚われすぎたり、自分を責めたりする必要はありません。次に大切なのは、そのクセに気づいた上で、より現実的で自分を大切にできる考え方に、少しずつ「修正」していく練習です。
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思考の「証拠」を探してみる ネガティブな考えが浮かんだ時に、「本当にそうだろうか?」「その考えを裏付ける証拠はどれくらいあるだろうか?」「逆に、そうではないという証拠はないだろうか?」と問いかけてみてください。「私は料理が全くできない」と思った時に、「でも、この前の集まりでは、みんな『美味しい』と言ってくれたな」「このレシピ通りに作れば失敗しないことが多いな」のように、別の側面にも目を向けます。
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他の可能性を考えてみる 一つの出来事に対して、ネガティブな解釈しか浮かばない時は、「他にどんな見方ができるだろう?」「別の可能性はないだろうか?」と考えてみましょう。「子供から返信がないのは、私のことを迷惑に思っているからだ」と思った時に、「今、忙しいのかもしれないな」「後でゆっくり返信しようと思っているのかもしれないな」のように、別の可能性を検討することで、心が少し楽になることがあります。
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思考を「言い換え」てみる練習 白黒思考や一般化しすぎた思考は、極端な表現になりがちです。より現実的でバランスの取れた表現に言い換えてみましょう。
- 「全てがダメだ」→「今回はうまくいかなかった点もあったけれど、良かった点もあった」
- 「いつも失敗ばかりだ」→「時には失敗することもあるけれど、成功した経験もたくさんある」
- 「〜すべきだ」→「〜できたらいいな」「〜しないという選択肢もある」
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自分への「優しい言葉」を選ぶ練習 他人に対しては優しくなれても、自分自身には厳しい言葉をかけてしまうことがあります。もし親しい友人が同じ状況にいたら、あなたはどんな言葉をかけますか?その優しい言葉を、自分自身にもかけてあげてください。完璧でなくても大丈夫だと認め、頑張っている自分を労う言葉を選びましょう。
これらの思考修正の練習は、すぐに完璧にできるものではありません。まるで新しい言語を学ぶように、根気強く繰り返すことで、少しずつ身についていくものです。練習する中でうまくいかない日があっても、自分を責めず、「今はこんな風に考えているんだな」と客観的に見つめることが大切です。
まとめ:自分自身を大切にする第一歩として
自己肯定感を下げてしまう「思考のクセ」は、多くの場合、ご自身を守るために無意識のうちに身についたものです。それに気づき、向き合うプロセスは、決して自分を否定することではありません。むしろ、ありのままの自分を受け入れ、これからの人生をより心地よく生きていくための、自分自身への優しさであり、大切な一歩です。
思考のクセに気づき、少しずつ変えていくことで、同じ出来事に対しても、感じ方や受け止め方が変わってくるのを実感できるかもしれません。心の中に生まれるネガティブな感情に振り回されることなく、穏やかな心持ちで日々を過ごせるようになるでしょう。
今日ご紹介したヒントが、あなたがご自身の心と向き合い、自己肯定感を育みながら、心穏やかに過ごすための一助となれば幸いです。あなたは、ありのままの自分で素晴らしい存在であることを、どうぞ忘れないでください。