人生後半を穏やかに 自分を満たす「心地よさ」のヒント集
人生の後半に差し掛かり、お子様の独立やご自身のキャリアの一区切りなど、ライフステージの変化を迎えられた方もいらっしゃるかと思います。生活のリズムが変わったり、家族との関係性が変化したりする中で、「これから、どう過ごしていこうか」「何だか心満たされない気がする」と、漠然とした思いを抱かれることもあるかもしれません。
幸せや充実感は、何か大きな目標を達成したり、特別な出来事があったりした時だけ感じられるものではなく、実は日々の小さな瞬間にこそ宿っています。それは、あなたにとっての「心地よさ」に気づき、それを大切にすることから生まれるものです。
この記事では、人生後半を心穏やかに、そして自分を満たしながら過ごすために、自分にとっての「心地よさ」を見つけ、日々に育んでいくためのヒントをお伝えします。
心地よさとは、あなただけの「ホッと」する感覚
心地よさとは、人それぞれ異なる、とても個人的な感覚です。それは、豪華な旅行や高価な買い物といった特別なことではなく、日常生活の中に隠されている小さな「ホッと」したり、「気持ちいいな」と感じたりする瞬間です。
例えば、
- 朝、お気に入りのカップで飲む一杯のコーヒー
- 晴れた日に窓辺で日向ぼっこをする時間
- 肌触りの良いタオルを使う瞬間
- 好きな音楽を聴きながら部屋を整えること
- 何もせず、ただ静かに過ごすひととき
これらは、ほんの一例です。心地よさは、五感を通して感じるもの、心のリラックスに関わるもの、そして、特定の行動や場所、人との関わりの中で生まれるものなど、実に多様です。
自分にとっての心地よさを見つける第一歩
では、どうすれば自分にとっての心地よさを見つけられるのでしょうか。その第一歩は、自分自身の内側に意識を向ける練習をすることです。
私たちは日々の忙しさの中で、自分の感覚や感情に気づきにくくなっていることがあります。まずは、小さなことからで構いませんので、意識的に自分自身の状態を感じ取ろうとしてみてください。
「何となく」の感覚に気づく
「何となく疲れたな」「何だか気が乗らないな」といった、ポジティブではない「何となく」の感覚に気づくことも大切です。これらの感覚は、今のあなたにとって何が心地よくないのか、あるいは何が足りていないのかを教えてくれるヒントになります。不快な感覚を避けたいという思いは、心地よい感覚を求める原動力にもなり得るのです。
小さな「心地よい」瞬間を捉える
次に、「あ、今、気持ちいいな」「ホッとするな」と感じる瞬間を意識的に捉えてみましょう。温かいお茶を飲んだとき、お風呂にゆっくり浸かったとき、外の空気を吸ったときなど、どんなに些細なことでも構いません。そうした瞬間を見つけたら、「これは私にとって心地よいことなんだな」と心の中でラベル付けしてみてください。
体と心の声を聞く
私たちの体と心は、常に私たちにサインを送っています。「疲れたから休みたい」「気分転換したい」「誰かと話したい」といった声に耳を傾け、できる範囲でその声に応えてあげましょう。自分の声に耳を傾けることは、自分を大切にするという感覚を育むことにつながります。
日々に「心地よさ」を育む具体的な方法
自分にとっての心地よさが少しずつ見えてきたら、それを意識的に日々の生活に取り入れてみましょう。
1. 「心地よさリスト」を作ってみる
見つけたり気づいたりした心地よい瞬間や、やってみたいと思う心地よいことをリストアップしてみましょう。例えば、
- 好きな香りの入浴剤を使う
- 肌触りの良いパジャマを着る
- 静かな場所でぼーっとする
- 美術館や公園に行く
- お気に入りの喫茶店で過ごす
- 好きな本を読み返す
- 温かい飲み物をゆっくり飲む
- ストレッチをする
などです。リストはいつでも見返せるようにしておくと、気分が優れないときや、何をしていいか分からないときのヒントになります。
2. 毎日の習慣に組み込む
リストの中から、毎日または数日おきにできる小さな心地よいことを選び、習慣にしてみましょう。例えば、朝起きたら窓を開けて新鮮な空気を吸う、寝る前に軽いストレッチをする、食事の前に「いただきます」と声に出して感謝するなど、短時間でできることから始めてみてください。
3. 五感を意識する
心地よさは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚といった五感に大きく関わっています。
- 視覚: 好きな色を取り入れる、綺麗な景色を見る、お花を飾る
- 聴覚: 好きな音楽を聴く、自然の音に耳を澄ます、静寂を楽しむ
- 嗅覚: アロマを焚く、好きな香りのものを使う、雨上がりの匂いをかぐ
- 味覚: 好きな食べ物や飲み物をゆっくり味わう
- 触覚: 肌触りの良いものに触れる、温かいお湯に浸かる
それぞれの感覚を通して、どんな時に心地よさを感じるかを意識してみましょう。
4. 完璧を目指さない
心地よさを日々に取り入れることに、完璧は求められません。疲れているときは無理せず休むことも、大切な心地よさの一つです。できなかった日があっても、自分を責める必要はありません。「また明日からやってみよう」と、気楽に続けていくことが大切です。
心地よさが自己肯定感につながる理由
自分にとっての心地よさを見つけ、それを大切にすることは、自己肯定感を高めることにもつながります。
自分の感覚に意識を向け、心地よいと感じることを自分に与えてあげる行為は、「私は自分の感覚を大切にしても良い存在なのだ」「私は自分を満たす時間を持つ価値がある」というメッセージを自分自身に送ることになります。これは、「自分はこれで良いんだ」という自己肯定感を育む上で、非常に根源的な体験となります。
また、日々の生活の中で小さな心地よさを積み重ねることは、「自分で自分の機嫌をとることができる」「自分を満たす方法を知っている」という自信にもつながります。この自信は、人生の様々な変化や課題に向き合う上での力となるでしょう。
終わりに
人生の後半は、自分自身を深く知り、慈しむための素晴らしい時間です。外的な役割や忙しさから少し解放された今だからこそ、自分の内側に意識を向け、あなただけの「心地よさ」を見つけて育てていくことができるのです。
それは、何か特別なことを始めることだけを意味するのではありません。今ある日常の中で、小さな心地よい瞬間を一つずつ拾い集め、味わうことから始まります。
完璧でなくて大丈夫です。今日からできる、ほんの小さな一歩を踏み出してみてください。自分を満たす心地よい時間は、きっとあなたの心を温め、自己肯定感を育み、そして大切な家族との関係にも豊かな潤いをもたらしてくれるはずです。
あなたの毎日が、あなたにとって心地よいもので満たされますように。